2026.10.24 (更新 2026.10.23) · 12分で読める AIツール比較

AI研修の助成金「実質○円」広告の読み方|経費助成と賃金助成を分けて計算し直す

「実質○円」は、2つのお金を引いた数字として作れます

AI研修の広告に「実質1万円」「助成金で負担ほぼゼロ」といった言葉があると、本当にその金額で済むのかが気になります。結論から書くと、この種の数字は、受講料から「経費助成」と「賃金助成」という性質の違う2つのお金を引くと作れます。2つを分けて計算し直すと、研修会社に払う受講料のうち戻るのは経費助成だけで、賃金助成は受講中に会社が払う給与の一部が戻るお金だと分かります。

この記事は、事業展開等リスキリング支援コース(中小企業)で、研修会社が開く研修に受講料を払って参加する形(事業外訓練)を前提にします。厚生労働省のパンフレット(令和8年8月3日版)、支給要領(支給のルールを定めた文書)、リーフレットなどで2026年10月9日に確認しました。ページ数は紙面に印刷された番号です。

研修が助成の対象になるか、どの区分(自社が企画・主催する研修か、研修会社が開く研修か)になるかは、実際の企画・主催・実施内容をもとに労働局(各都道府県にある、助成金の受付窓口)が判断します。ここでは広告の数字の読み方に絞ります。

この記事を読むとわかること

  • 広告の「実質○円」が、何を引いた数字なのか
  • 経費助成と賃金助成の違い
  • 仮の例での、4つに分けた計算の手順
  • 広告の言い回し別の読み方と、見積書で聞く質問

目次

広告の数字は何を引いたものか(仮の例) 受講料12万円(仮)から、経費助成9万円(仮)と賃金助成1万2,000円(仮)の両方を引くと、広告の計算では1万8,000円になる。この数字は当社が示す負担額ではない。下の帯に、経費助成と賃金助成は別のお金で、数字はすべて仮の例と書いた図 広告の数字は何を引いたもの? 受講料(税込・1人) 12万円(仮) 研修会社へ先に全額払う 経費助成 −9万円(仮) 条件を満たせば受講料の75% 賃金助成 −1万2,000円(仮) 給与の一部の補てん 広告の計算:1万8,000円 受講料から2つの助成を引いた数字 当社が示す負担額ではありません 経費助成と賃金助成は別のお金 数字はすべて仮の例です AI Lab OISHI

当社が作った架空の広告文で見てみます。実在の会社や商品とは関係ありません。

「受講料12万円が、助成金で実質1万8,000円に」

「助成金を使えば、負担はほぼゼロ」

1つ目の数字は、仮の例(受講料12万円・12時間・中小企業)に当てはめると、受講料から経費助成9万円と賃金助成1万2,000円を引いて出ます。広告の計算をなぞったもので、当社が示す負担額ではありません。広告の数字は、領収書と給与明細を1枚の紙に並べ、差額だけを大きく書いた紙のようなものです。

厚生労働省は、こうした言い回しに注意を呼びかけています。リーフレット「『訓練経費』は無料になりません」は、この助成金で訓練経費が無料になったり、利益を得たりすることは制度上できないとしています。

「無料で訓練が受けられます」は危険サインで、助成金を受けるには事業主が訓練費を全額負担することが必須要件、とも書いています。パンフレット(p.10・p.21)にも、訓練を実質無料で受けさせられると謳う勧誘がある、という注意があります。

押さえたいのは、リーフレットが全額負担していない事例に挙げているのが、「訓練は実質無料」「事業主の負担はゼロ」と言われ、訓練の前後に金銭を受け取った場合などだという点です。言葉より、数字の中身とお金の流れを見ます。

経費助成と賃金助成は別のお金

人材開発支援助成金は、訓練経費と、訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です(p.2)。このコースでは、2つは別々に計算されます。

項目 経費助成 賃金助成
何のお金か 研修会社に払った受講料の一部が、審査のあとに戻る 受講中に会社が払う給与の一部の補てん
計算 対象経費の75%。1人1訓練の上限は30万円(10時間以上100時間未満) 1時間1,000円×所定労働時間内の実訓練時間
数えるもの 受講案内などで定めた入学料・受講料・教科書代等と消費税。受講生の旅費や宿泊費は対象外 所定労働時間内の時間だけ。昼食を伴う休憩と移動は数えない
eラーニング 対象(上限は15万円) 対象外

中小企業の場合。詳細版パンフレット p.30・32・38、支給要領0501・0504〜0506・0508・0510(2026年10月9日確認)。所定労働時間は会社が決めた勤務時間、実訓練時間は移動時間などを除いた助成の対象になる訓練の時間です(p.11)。

たとえるなら、経費助成は研修会社へ払った代金の払い戻し、賃金助成は社員に払った給与の補助で、どちらも国から会社へ戻りますが、戻る理由が別のお金です。賃金助成は、受講料の割引券ではありません。賃金助成は研修会社の価格と関係なく1時間1,000円で決まり、時間数に応じて増えます。当社の見立てでは、研修会社どうしを比べるときは、受講料と経費助成の行で比べると、同じ基準で並べられます。

経費助成と賃金助成の違い(中小企業) 経費助成は、対象になれば受講料の一部があとから戻るお金で、受講料の75%、上限あり、eラーニングも対象。賃金助成は、給与の一部の補てんで、1時間1,000円に所定労働時間内の時間をかけて計算し、eラーニングは対象外。下の帯に、賃金助成は受講料の値引きではなく給与の一部の補てんと書いた図 経費助成と賃金助成(中小企業) 経費助成 対象になれば 受講料の一部が 審査のあとに戻る 受講料の75% (上限あり) eラーニングも対象 賃金助成 給与の一部の補てん 1時間1,000円 ×所定労働時間内 eラーニングは対象外 賃金助成は受講料の値引きではない 給与の一部の補てんです AI Lab OISHI

4つに分けて計算し直す手順

広告の数字を見たら、次の4つに分けて自分で計算します。例は仮の例です(実際の研修の料金や助成額ではありません)。受講料12万円(税込・1人)、研修は12時間ですべて所定労働時間内、対面または同時双方向(講師と質疑応答ができるオンライン)で行い、中小企業、事業展開等リスキリング支援コースとします。

手順 計算 金額(仮) お金の動き
1 受講料 受講料(税込)×人数 12万円 研修会社へ、先に全額払う
2 経費助成 12万円×75% 9万円 国から会社へ。審査のあとに戻る
3 賃金助成 1,000円×12時間 1万2,000円 国から会社へ。受講中の給与の一部の補てん
4 研修費で戻らない分 1 − 2 3万円 研修会社へ払ったうち、戻らない分

数字はすべて仮の例。率と上限は詳細版パンフレット p.38・支給要領0504〜0506(2026年10月9日確認)による。

4つに分けて計算する(仮の例) 1つ目は受講料12万円(仮)で、先に全額払う。2つ目は経費助成で、12万円の75%の9万円(仮)。3つ目は賃金助成で、1,000円に12時間をかけた1万2,000円(仮)。4つ目は研修費で戻らない分で、12万円から9万円を引いた3万円(仮)。下の帯に、当社の見立てとして、賃金助成は受講料から引かず別に見ると書いた図 4つに分けて計算(仮の例) 1 受講料 12万円(仮) 税込・1人分。先に全額払う 2 経費助成 9万円(仮) 対象になれば12万円×75% 3 賃金助成 1万2,000円(仮) 1,000円×12時間 4 研修費で戻らない分 3万円(仮) 助成の対象になった場合の1−2 当社の見立て:賃金助成は 受講料から引かず別に見る AI Lab OISHI

広告の「実質1万8,000円」は、12万円から9万円と1万2,000円の両方を引いた数字です。言い換えると、研修会社に払うお金と、会社が社員に払う給与の補てんが、1つの引き算に混ざっています。分けて見ると、研修費で戻らない分は3万円で、賃金助成の1万2,000円は給与の一部の補てんです。受講中の給与は会社が払うので、たとえば受講者の給与が1時間2,000円(仮)なら、12時間で2万4,000円で、うち1万2,000円が補てんされます。

当社の見立てでは、どちらの数字が必要かは会社の見方で変わります。研修会社に払うお金の話なら、賃金助成は引かずに見ます。受講中の人件費まで含めるなら、給与を別の行に立てます。賃金助成まで引くと、仮の例の条件では、受講料が4万8,000円の研修で結果が0円になります(4万8,000円−3万6,000円−1万2,000円)。研修費が無料になったのではなく、給与の補てんを引いた結果です。

助成金は後払いなので、広告の数字は、お金が戻ったあとの姿です。入金までの流れは立て替えから入金までの記事で整理しています。

条件が変わると、広告の数字はどう動くか

広告の数字は、助成の条件がすべてそろった場合の数字です。仮の例で、条件を1つずつ変えます。

条件 経費助成 賃金助成 広告と同じ引き算
12時間すべて所定労働時間内 9万円 1万2,000円 1万8,000円
4時間が所定労働時間外 9万円 8,000円 2万2,000円
eラーニング 9万円 0円 3万円
助成の対象にならなかった 0円 0円 12万円

数字はすべて仮の例。「広告と同じ引き算」は、受講料から経費助成と賃金助成を引いた額で、当社が示す負担額ではありません。経費助成は、業務上の義務として労働時間中に行う訓練なら、所定労働時間内かどうかを問いません(支給要領0508)。

時間数にも気をつけます。助成に使うのは「実訓練時間数」で、昼食を伴う休憩と移動は含めず、開講式などは累計60分までです(p.29)。広告の「12時間」が実訓練時間かを確かめます。10時間に満たないと対象外です(p.10)。

AI研修の助成金広告の言い回し別の読み方

次の言い回しは、すべて当社が作った架空の広告文です。実在の会社や商品とは関係ありません。

広告の言い回し 読み方と確かめること
「助成金で実質1万8,000円に」 経費助成と賃金助成の両方を引いた数字として作れます。4つに分けて計算し直します。
「負担はほぼゼロ」 経費助成は受講料等の75%(中小企業)なので、残りは会社の負担です。何を引いた数字かを聞きます。
「後日キャッシュバック」「広告に協力すれば費用の負担なし」 研修会社などから返金や広告の対価などの金銭を受け取ると、経費助成は対象外です(p.33)。リーフレットも同じ種類の提案を、危険な例に挙げています。
「AI研修とAIツール導入のセットで、まるごと助成」 AI研修の費用は助成の計算に入れられる費用(対象経費)ですが、AIツールの導入費用は対象経費ではありません(p.21)。内訳を分けてもらいます。
「申請手続きは無料でサポート」 申請書の作成・提出代行・審査対応を、社会保険労務士でない者が報酬を得て業として行うことは、社会保険労務士法第27条で制限されています(弁護士など、他の法律に定めがある場合は別)。無償でも受講料に対価が含まれると評価されれば問題になると、p.21 が注意しています。
「出なければ受講料の一部をお返しします」 パンフレットの例では、助成金が支給されなかったときに研修会社が受講料の一部を返すと、助成金の有無で生じる差額が支給対象外になります(p.33 例2)。
「当コースは助成金の対象です」 対象になるか、どの区分かは、実際の企画・主催・実施内容をもとに労働局が判断します。8月3日の改正(変更点のリーフレット)では、汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練などが対象外の例に挙げられています(改正の記事)。

広告の言い回しは、当社が作った架空の文です。p.は詳細版パンフレットの紙面ページ。パンフレット p.10・21・33(2026年10月9日確認)。

研修会社から金銭を受け取ると、経費助成は対象外

パンフレットは、研修会社(資本関係や業務上の関係がある者など、関連する者を含みます)から、次のような金銭を受け取った場合は経費助成の対象にならないと書いています(p.33)。

研修会社から金銭を受け取ると、経費助成は対象外 対象外になる例は4つ。受け取った額と助成額の合計が受講料と同額、感想や広告協力のお礼、営業協力費や協賛金など、研修に付随する契約での支払い。下の帯に、経費助成は対象外になること、クーポンや貸付、相殺なども同様であること、賃金助成は他の要件で判断されることを書いた図 研修会社から金銭を受け取ると 1 受け取った額+助成額=受講料 2 感想・広告協力のお礼 3 営業協力費・協賛金など 4 研修に付随する契約での支払い 経費助成は対象外になります クーポン・貸付・相殺なども同様 賃金助成は他の要件で判断 AI Lab OISHI

金銭のほか、クーポン券、貸付、他の支払いの相殺や免除、製品やサービスの提供も含まれます(p.33 ※2)。賃金助成は、他の要件を満たしていれば対象になり得ます(p.30)。

レシートの金額と財布から実際に出ていった金額がずれた家計簿のようなイメージで、「全額を負担した」と言えなくなります。不正受給と判断されると、会社名と代表者名の公表、不正受給額の全額返金と2割相当額・延滞金の支払い、5年間の雇用関係助成金の停止があると、リーフレットは書いています。

見積書・広告に聞く質問

見積書や広告の数字を受け取ったら、次の8つを確かめます。答えを書面でもらうと、計算し直しやすくなります。

  1. 受講料の内訳:受講料・教科書代と、ツールの利用料などが分かれているか(支給要領0501)。
  2. 数字の分け方:経費助成と賃金助成に分けて書かれ、引き算の中身が分かるか。人数は雇用保険の被保険者(雇用保険に加入している従業員)で数えているか(p.17)。
  3. 賃金助成の時間:昼休みや移動を除いた実訓練時間は何時間か。所定労働時間内の日程か。eラーニングではないか。
  4. 受け取るお金:研修会社(関連する会社を含む)から、返金、還元、謝礼、協力金、クーポン、貸付、相殺、製品やサービスの提供を受ける話はないか(p.33)。
  5. 価格の差:助成金を使う場合と使わない場合で、受講料は同じか(p.33)。
  6. 支給されないとき:助成金が支給されなかった場合(不支給)、受講料はどうなるか(p.33 例2)。
  7. 申請の担当:申請書の作成と提出は誰が行い、費用はいくらか(社会保険労務士法第27条・p.21)。
  8. 対象かどうかの確認:労働局への確認は誰がいつ行うか。計画届(研修の前に労働局へ出す、訓練の計画の書類)の期限(開始日の6か月前から1か月前まで)、コースの期限(2027年3月31日まで)との日程の関係はどうか。

当社の見立てでは、答えがあいまいな項目は、広告の数字から抜けている可能性のある部分です。いわば、引っ越しの見積りを基本料金とオプションに分けて見るのと同じで、1行ずつ分けると比べやすくなります。

見積書・広告で聞く(5つ・全8問は本文) 1つ目は受講料の内訳。2つ目は助成額が経費助成と賃金助成に分けてあるか。3つ目は賃金助成の時間が何時間か。4つ目は研修会社から受け取るお金があるか。5つ目は対象かどうかを誰が確かめたか。下の帯に、迷ったら管轄の労働局へ相談し、不審な勧誘は情報提供をと書いた図 見積書・広告で聞く(5つ・全8問は本文) 1 受講料の内訳は? 2 助成額は2つに分けてある? 3 賃金助成の時間は何時間? 4 研修会社から受け取るお金は? 5 対象かどうかは誰が確かめた? 迷ったら管轄の労働局へ 不審な勧誘は情報提供を AI Lab OISHI

広告表示の決まりと、迷ったときの相談先

消費者庁は2018年11月に、携帯電話の店頭広告について景品表示法(不当な表示を禁じる法律)上の考え方を公表しました。「実質負担金0円」を例に、強調した金額の条件が書かれていない場合や、条件の文字が小さい・強調した金額から離れている場合は、問題となるおそれがあると示しています。

ここから借りられる見方は、数字のすぐ近くに、条件が読める大きさで書かれているかです。ただし、この資料が扱うのは一般消費者向けの携帯電話の広告です。会社が研修を買う場面に当てはまるかは、この記事では判断しません。

迷ったときは、厚生労働省のリーフレットが、判断に迷うときはすぐに管轄の労働局へ相談すること、これらに当たる勧誘を受けたら労働局へ情報提供することを呼びかけています。神奈川県内の窓口は、神奈川労働局の神奈川助成金センターです。費用感の全体はAI研修の費用相場・助成金・ROIの記事に、補助金で同じように「実質」をうたう提案の読み方はホームページ制作の補助金の記事にあります。

よくある質問

「実質○円」の広告は、受講料から何を引いた数字ですか。

受講料から経費助成と賃金助成の両方を引くと作れます。仮の例(受講料12万円・12時間・中小企業)なら、12万円から9万円と1万2,000円を引いて1万8,000円です。

助成金で研修が無料になることはありますか。

厚生労働省のリーフレットは、助成金を利用して訓練経費が無料になったり利益を得たりすることは制度上できないとしています。

賃金助成は、受講料の値引きになりますか。

なりません。受講中に会社が払う給与の一部の補てんで、1時間1,000円に所定労働時間内の実訓練時間をかけて計算します。eラーニングは対象外です。

助成金を使う会社と使わない会社で、受講料が違うとどうなりますか。

同じ内容の研修で、助成金の有無だけで受講料に差をつけていると、その差額は支給対象になりません(パンフレット p.33 の例)。

広告に「助成金の対象」と書かれていれば安心ですか。

研修が対象になるか、どの区分になるかは、実際の企画・主催・実施内容をもとに労働局が判断します。2026年8月3日の改正では、汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練などが対象外の例に挙げられています。計画届の前に、労働局へ確認してください。

まとめ

1|広告の数字は、2つのお金を引いたもの 経費助成は受講料の一部が戻るお金、賃金助成は受講中の給与の一部の補てんです。

2|4つに分けて計算し直す 受講料・経費助成・賃金助成・研修費で戻らない分に分け、条件がそろっているかを見ます。

3|お金の流れと、対象かどうかを聞く 研修会社から受け取る金銭があると経費助成は対象外です。迷ったら労働局へ相談します。

当社のAI研修のページ(/ai-training/)にも、受講料から助成金の合計を引いた額と、経費助成・賃金助成を分けた内訳を載せています。この記事の手順で計算し直せます。助成の対象になるかどうかは、実際の企画・主催・実施内容をもとに労働局が判断しますので、ご検討の際は労働局にもご確認ください。

参照元・出典

本記事の内容は 2026年10月9日に確認した時点のものです。助成金の要件、率、様式は改正されることがあるため、契約や計画届の前に、最新の資料と管轄の労働局でご確認ください。

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