2026.08.06 · 19分で読める

ホームページにWordPressは必要か|「SEOに強い」の誤解と静的サイトという選択


ホームページにWordPressは必要か——この問いの判断材料として、まず3つの数字を並べます。世界のウェブサイトの41.2%はWordPressで作られており、既知のCMS(コンテンツ管理システム)に限れば59.1%を占めます(W3Techs・2026年7月26日時点)。一方、2025年に新しく報告されたWordPress関連の脆弱性は11,334件(前年比42%増)で、91%はプラグイン由来、WordPress本体(コア)は6件でした(Patchstack「State of WordPress Security in 2026」)。国内では、総務省「令和7年通信利用動向調査報告書(企業編)」で自社ホームページの開設率が93.3%に達しています(常用雇用者100人以上の企業が対象)。

数字を並べても答えは出ません。「世界標準だから安心」とも「脆弱性が多いから危険」とも読めるからです。一般論で決着がつかないのは統計が足りないからではなく、判断に必要な情報があなたの会社の中にあるからです。

本記事はWordPressを否定も礼賛もしません。まず「WordPressはSEOに強い」という説をGoogleの公式ドキュメントで検証し、そのうえでWordPressが活きる会社と静的サイトで足りる会社の条件を同じ物差しで並べます。物差しは1本、「誰が・何を・何回更新するか」です。

この記事の判定(先に結論)

判定1|「WordPressだから検索に強い」という公式見解は存在しない。Googleが示す技術要件は3つだけで、CMSの種類は入っていない。

判定2|WordPressが活きるのは、社内に更新する人がいて、月2回以上更新し、ページが増え続ける会社。3つそろえば管理画面は毎月元が取れる。

判定3|1つでも欠けるなら、静的サイト(管理画面を持たない作り)で足りる可能性が高い。後からCMSに移せるが、その逆は手間もお金もかかる。

「ホームページにWordPressは必要か」の答えが割れる理由

同じ質問を3人に投げると、3通りの答えが返ってきます。制作会社は「WordPressにしておけば間違いない」、詳しい知人は「重いしセキュリティが面倒」、検索で出てきた記事は「SEOに強いから必須」。どれも嘘ではなく、違う立場から違う場面の話をしているだけです。

まず言葉を整理します。CMS(コンテンツ管理システム)とは、管理画面にログインして、文章や写真を自分で差し替えられる仕組みのこと。WordPressはその代表格で、無料のソフトウェアです。いわば店の看板の裏に差し込み式のパネルを付けるようなもの。自分で「本日休業」の紙を入れ替えられますが、書き換える機会がない店では、差し込み口の分だけ構造が複雑になるだけです。

ここで問いのすり替えが起きています。知りたいのは「WordPressというソフトは良いものか」ではなく、「うちの会社の運用に、CMSという仕組みが要るのか」のはずです。業務用ミキサーは良い機械ですが、毎日パンを焼く店と年に2回ホットケーキを作る家庭とでは、置くべきかの答えは正反対。決めるのは道具の性能ではなく、使う頻度と使う人です。

もうひとつの原因は、「作る話」と「使い続ける話」の混同です。制作時は、デザインの型や機能部品が大量にそろうWordPressが圧倒的に効率的。一方、公開後は更新・バックアップ・不具合対応が毎月発生します。作る立場の「便利」と使い続ける立場の「面倒」は、どちらも事実です。

判断を3つの質問に分解します。

WordPressが要るかを分ける3つの質問 更新するのは社内の人か、更新は月2回以上か、ページは増え続けるかという3つの質問に答え、3つとも「はい」ならCMSが活きる型、1つでも「いいえ」なら静的サイトで足りる可能性が高いことを示す判断図 WordPressが要るかを分ける3つの質問 質問① 更新するのは社内の人ですか? 外部の担当に任せるなら、管理画面は使わない 質問② 更新は月に2回以上ありますか? 年に数回なら、管理画面は年に数回しか開かない 質問③ ページは増え続けますか? 記事・実績・商品が増えるなら一覧の自動生成が効く 3つとも「はい」 CMSが活きる型 1つでも「いいえ」 静的サイトで足りる可能性 AI Lab OISHI

「とりあえずWordPressで」が生む3つのズレ

判断を飛ばして「とりあえずWordPressで」と決めたとき、よく起きるズレが3つ。一度も開かれない管理画面、誰も把握しないまま増えたプラグイン(追加部品)、更新の通知を押していいか判断する人がいない状態。どれもWordPressの欠陥ではなく、「自分で更新する前提の道具」を自分で更新しない体制に置いたことで生まれるズレです。

検証|「SEOに強い」をGoogle公式見解で確かめる

WordPressを選ぶ理由として最も多く語られるのが「SEOに強いから」です。判断の土台なので、公式ドキュメントで確認します。

Googleは「Google検索の基本事項」で、検索結果に表示される決まりごとを公開しています。その「技術要件」は3つだけ。①Googlebot(Googleの巡回プログラム)がブロックされていないこと、②ページが機能していること(HTTPの200=「正常」の応答が返ること)、③インデックス登録可能なコンテンツがあること(Googleの索引に載せられる中身のこと)。「どのCMSで作られているか」という条件は入っていません

さらに「SEOスターターガイド」の「Googleが重要でないと考えること」という章には、メタキーワード、キーワードの乱用、URLパスの中のキーワード、見出しの数や順序が並びます。ここにも「CMSの種類」は登場しません。推奨リストにも非推奨リストにもCMSは出てこない——これが公式ドキュメントの現状です。

Googleが公式に示していること 検索に出るための技術要件3つと、Googleが重要でないと考えること3例を並べ、どちらのリストにもCMSの種類が含まれないことを示す構造図 Googleが公式に示していること 検索に出るための技術要件 Googlebotがブロックされていない HTTP 200が返る(ページが動く) インデックス登録可能な内容がある 重要でないとされていること メタキーワード/キーワード乱用 URLの中のキーワード 見出しの数や順序 どちらのリストにも「CMSの種類」は出てこない Googleが見るのは作り方ではなく、出来上がったページ AI Lab OISHI

Google検索の担当者の説明も同じ方向です。ジョン・ミューラー氏は動画シリーズ「Ask Googlebot」(2022年7月)で、Googleのシステムはページがどう作られたかではなく最終的な結果を見ていると説明しています(紹介はSearch Engine Journalの記事=二次情報)。日本語でもWeb担当者Forum(2019年5月10日)が「『WordPressはSEOに強い』は都市伝説」として同氏の見解を紹介し、検索結果にWordPress製サイトが多いのはシェアが大きいことの反映だと説明しています(二次情報)。

それでも「強い」と感じられてきた理由

完全なデマかというと、そうではありません。この説には半分の真実があります。WordPressは初期状態でも、タイトルが正しく設定され、見出しの構造が整い、サイトマップ(ページ一覧をGoogleに知らせるファイル)も自動生成され、スマホ表示にも対応します。SEOの土台を落としにくいのです。

たとえるなら入学試験の願書です。正しく出さなければ、実力があっても採点の土俵に上がれません。CMSは、その願書を自動で正しく書いてくれる仕組みに相当します。ただし正しく出せることは加点ではなく、出せないことが減点になるだけ。手作業のページでも同じ土台を満たせば条件は同じ。「WordPressだから有利」ではなく「土台を落とすと不利」です。

速度は「積み上げた重さ」で決まる

表示速度も同じです。Googleは「ページエクスペリエンスの理解」で、単一の「ページエクスペリエンス シグナル」は存在せず、コアランキングシステムが多様なシグナルで体験を評価すると説明し、Core Web Vitals(読み込みの速さや反応を測る指標群)はランキングシステムで使われるとも明記しています。

実測データにも傾向が出ています。HTTP ArchiveとChrome UX Reportの2026年4月時点データを集計したSearch Engine Journalの分析(二次情報)では、Core Web Vitalsが「良好」の割合はWordPressで約49%と7つの主要プラットフォームの中で最も低く、中央値のページ重量は2.76MBで2番目に重い部類でした。

これを「WordPressは遅いソフト」と読むのは早計です。原因の多くは機能を自由に足せるという長所の裏返し。イメージとしては、遠足のリュックに「あると便利」を入れ続け、歩き出す前から重い状態です。速いか遅いかを決めるのはCMSの名前ではなく、そこに何を積んだかです。

運用負荷マトリクス|「誰が・何を・何回」で決める

ここからが本記事の中心です。CMSの名前を比べるのをやめ、自社の運用のかたちから決めます。軸は3つです。

軸①:誰が更新するか

手を動かす人を1人に特定します。「必要なら誰かが」ではなく、名前が挙がるかが要点。選択肢は経営者本人社内の担当者(専任でなくても業務時間がある人)、外部に依頼の3つ。名前が出てこないなら、実質「更新されない」が正解です。

軸②:何を更新するか

更新の中身で負荷は違います。A. 文字情報(営業時間・料金・休業のお知らせ)は差し替えだけの軽い作業。B. 写真・実績は画像の準備と配置が加わります。C. 記事は書く作業が本体で、ページも増え続けます。D. 商品・在庫・予約は他のデータと連動するため仕組みが要ります。A中心かC・D中心かで道具は変わります。判定図の質問③「ページは増え続けますか」は、この軸②の言い換えです。C・D中心ならページは増え、A中心なら増えません。

軸③:何回更新するか

頻度は希望ではなく実績で見ます。直近1年で何回更新したか数え、週2回以上/月2〜4回/月1回以下の3段階に分けてください。多くの会社が「更新するつもりだったが、実際は年に2回だった」という現実に直面します。恥ずかしい話ではなく、本業に集中した結果であることが多いはずです。

3軸のうち判定に最も効くのが、「誰が」×「何回」の組み合わせです。

運用負荷マトリクス(誰が更新するか×更新頻度) 更新する人を経営者本人・社内の担当者・外部に依頼の3列、更新頻度を週2回以上・月2〜4回・月1回以下の3行に分け、9つの組み合わせごとにCMSが活きるか静的で足りるかを示したマトリクス図 運用負荷マトリクス(誰が×何回) 更新する人と頻度で、CMSが要るかは決まる 更新頻度 経営者本人 社内の担当者 外部に依頼 週2回以上 CMSが活きる 毎日の更新に耐える CMSが活きる 更新ルールを決める どちらでも可 速さは依頼先次第 月2〜4回 条件つきでCMS 続く見込みが要る CMSが活きる 担当と時間の確保 静的で足りる 窓口だけ決める 月1回以下 静的で足りる 管理画面は開かない 静的で足りる 年数回なら依頼で可 静的で足りる 維持費だけが残る AI Lab OISHI

読み方は単純です。青(CMSが活きる)は、社内の人が手を動かし、かつ頻度が保たれている場合だけ。緑(静的で足りる)は、管理画面を用意しても開かれない領域。ただし青のセルでも、更新の中身が営業時間や料金の差し替えだけで増えるページがないなら、判断は静的側に寄ります(=先ほどの質問③が「いいえ」のケース)。琥珀色のうち経営者本人の欄は軸②で判断します(増えるならCMS側)。

業種ごとの型を同じ物差しで並べます。自社の実績値に置き換えて読んでください。

業種の例 よくある更新内容 実際の頻度 手を動かす人 この物差しでの判定
飲食店 営業時間・季節のメニュー 月1〜2回 本人または依頼 静的で足りることが多い
美容室・サロン 施術写真・キャンペーン 月2〜4回 社内の担当者 条件つき(担当の時間が続くならCMS)
建設・工務店 施工実績が1件ずつ増える 月1〜4回 社内の担当者 増え続けるならCMSが効く
士業事務所 お知らせ・制度改正の解説 月1回以下〜月2回 本人または依頼 静的で足りる/記事を続けるならCMS
小売(ネット販売あり) 商品・価格・在庫の連動 週2回以上 社内の担当者 仕組みが要る領域

決め手を1つ足すなら「90日ルール」

条件つきの欄の決め手が90日ルールです。「その更新は90日後も同じペースで続いていそうか」を自問します。繁忙期をまたいでも続くか。続く見込みがあるならCMS側、自信が持てないなら静的側から。これは能力ではなく本業の忙しさに正直であるかの問題です。

WordPressが活きる会社の5つの条件

次はWordPressが力を発揮する条件です。当てはまる会社には、今も良い選択肢です。

  1. 手を動かす人の名前が挙がる——「誰かが」ではなく○○さんが、と言え、その人の業務時間に更新作業が組み込まれている。
  2. 更新が月2回以上ある——管理画面は開く回数が多いほど元が取れます。年に数回なら、その都度依頼するほうが総手間は少ない。
  3. ページが増え続ける——記事、施工実績、商品、スタッフ紹介など。一覧やカテゴリ分けの自動生成がCMSの本領で、手作業では更新漏れが起きます。
  4. 将来の機能拡張が具体的に見えている——会員登録、予約、ネット販売、多言語など。「いつか必要かも」ではなく時期と担当が想像できる段階か。
  5. 更新と監視の担当が決まっている——本体・テーマ・プラグインの更新を誰が判断するか。社内でも保守契約でもよく、決まっていることが条件です。

この5つがそろえば、管理画面は毎月働きます。たとえるなら社員食堂の厨房です。毎日100食を出す会社なら自前の厨房が安く早く、維持費も稼働率が高ければ回収できます。稼働率こそが、自前の設備を持つかの分かれ目。逆に3つ以上欠けているなら、厨房を作ったのに月2回しか火を入れない状態。設備が悪いのではなく、稼働の見込みが合っていないだけです。

CMSがなくても困らない会社の条件

反対側も見ます。CMSがなくても成り立つのは、次の3つが当てはまる会社です。

第一に、更新を自分たちでやらないと決めている会社。更新のたびに担当者へ連絡する形なら管理画面は要らず、「ログイン情報を管理する」仕事も消えます。

第二に、更新頻度が月1回以下の会社。年に数回の差し替えなら、依頼して数日で反映されるほうが速い。1年ぶりに開いた管理画面で操作を思い出すのは、1年ぶりの確定申告ソフトと同じくらい時間がかかります。

第三に、ページが増えない会社。会社案内・サービス・料金・アクセス・問い合わせで完結しページ数が固定なら、一覧の自動生成という最大の利点が働きません。

「CMSがない=更新できない」ではありません。必要なのは管理画面ではなく更新の窓口。「営業時間を変えたいとき、誰に、どう伝えれば、いつまでに直るのか」が決まっていれば更新は回ります。管理画面があっても窓口がなければ、たいてい情報は古いままです。

副産物もあります。管理画面がないことは、ログインを盗まれる入口が存在しないことでもあります。いわば、現金を置かない店に金庫を置かないようなもの。金庫が悪いのではなく、守るものがなければ金庫と鍵の管理という仕事自体が発生しません。

CMSを持つと生まれる「見えない仕事」

費用を考えるとき、多くの人は制作費とサーバー代だけを見ます。実際に効くのは、そのあと毎月発生する作業です。

更新は3種類あり、性質が違う

WordPressの「更新」は3つあります。①本体(コア)②テーマ(デザインの型)③プラグイン(追加部品)。①の細かい修正は自動適用が一般的ですが、大きな更新やテーマ・プラグインは押していいかの判断が要ります。組み合わせ次第で表示が崩れることがあるためです。

機会は少なくありません。WordPress公式のリリース一覧では、直近1年(2025年8月〜2026年7月)で9回のバージョンが公開され、最新の安定版は2026年7月17日公開の7.0.2。公式の動作要件ではPHP(サイトを動かす言語)8.3以上、MariaDB 10.11以上またはMySQL 8.0以上(記事や設定を保管する倉庫にあたるソフト)が推奨され、HTTPS(通信の暗号化)は必須です。サイト側だけでなくサーバー側も面倒を見る必要があります

数字で見る、CMS運用の見えない仕事 2025年に報告されたWordPress関連の脆弱性が11,334件、うちプラグイン由来が91%で本体由来はわずか6件、公開から最初の攻撃観測までの加重中央値が5時間、直近1年のリリース回数が9回であることを示す数値カード 数字で見る、CMS運用の見えない仕事 11,334件 2025年に新しく報告された WordPress関連の脆弱性 91% その脆弱性のうち プラグイン由来が占める割合 本体(コア)由来はわずか6件 5時間 公表から最初の攻撃観測まで (加重中央値) 9回 直近1年に公開された WordPressの更新版の数 AI Lab OISHI

数字が示すのは「WordPressが危ない」ではない

冒頭のPatchstackのレポートを丁寧に読みます。内訳はプラグイン由来91%、テーマ由来9%、本体はわずか6件(いずれも低リスク)。高い深刻度と判定されたものは1,966件(全体の17%)で前年から113%増、弱点の公表から最初の攻撃が観測されるまでの加重中央値は5時間(攻撃の激しさで重みづけした、真ん中あたりの値)、公表時点で修正が出ていなかったものが46%と報告されています。

内訳の意味は明確です。危ないのはWordPress本体ではなく、後から足した部品の管理。言い換えれば、CMSを選ぶ判断は「部品を管理し続ける仕事を引き受ける」判断でもあります。車を買うことと車検・日常点検がセットなのと同じ構造です。

仕事の量自体は大きくありません。使っていないプラグインとテーマを削除する、更新を月1回まとめて適用する、バックアップから戻せることを一度試す——この3つを月1回30分で回せるなら、多くの中小規模サイトは管理できます。問題は量ではなく、その30分が誰の予定表にも入っていないことです。外部に任せるなら「更新を月何回、どこまでやるのか」「不具合時に誰が戻すのか」を契約前に確認します。この点は外部サービスに業務を預けるときのセキュリティ設計でも整理しています。

静的サイトでできること・できないこと

CMSを使わない場合どう作るのか。答えが静的サイトです。完成したページをそのままサーバーに置いておく作りを指します。訪問者が開くたびに中身を組み立てるCMSに対し、静的サイトは完成品を渡すだけ。イメージとしては、注文が入ってから調理する店と作り置きを並べる店の違いです。提供が速く、厨房(管理画面やデータベース)がないぶん壊れる箇所も減ります。

静的サイトでできること・CMSがある方が楽なこと 左側に静的サイトでもできるSEOや解析などの6項目、右側にCMSがある方が楽な自分での更新や会員機能など6項目を並べた比較図 静的でもできること・CMSが楽なこと 静的サイトでもできる タイトル・見出しの最適化 サイトマップの送信 構造化データの記述 スマホ対応・SSL・高速表示 問い合わせフォーム アクセス解析の設置 CMSがある方が楽 自分で管理画面から更新 会員登録・ログイン ネット販売・在庫の連動 予約の空き状況の管理 数百ページの一括管理 複数人での同時編集 右側が要らないなら、CMSは必須ではなく選択肢になる AI Lab OISHI

SEOの土台は、静的サイトでも全部できる

「静的サイトはSEOで不利」という誤解に、Googleの公式ドキュメント上の根拠は見当たりません。前述の技術要件3つは静的サイトでも満たせます。タイトル設定も、見出しの構造も、構造化データ(検索結果に住所や営業時間などを表示させる記述)も可能です。問い合わせフォームだけは例外で、外部のフォームサービスを組み合わせて実現します。送信の処理をよそに任せるので、サイト本体は完成品のままで済みます。

サイトマップも同様です。Googleの「サイトマップの作成と送信」では、XML形式のほか1行に1つURLを書いただけのテキストファイル形式でも送信できると明記されています。20ページ程度ならテキストファイル1つで足り、CMSがなければ作れないという制約はありません。

静的サイトが不得意な領域もはっきりしている

会員登録、ネット販売と在庫連動、予約管理、数百ページの一括管理、複数人での同時編集——その場でデータを処理する仕組みが要るので、CMSや専用サービスの領域。使う予定があるなら、判断は最初から決まっています。

また、静的サイトでは更新のたびにファイルを作り直すため、更新の窓口を決めることとセットです。

私たちAI Lab OISHIの月額制のホームページ制作も、この考え方で設計しています。更新はすべてこちらで行う前提なので、お客様用の管理画面を作らず静的サイトで構築します。管理画面がないぶん速く、壊れる箇所が少なく、維持の仕事も減る。逆に、ご自身が毎週管理画面を開いて更新したい場合は合いません。

迷ったときの5つの質問

ここまでをチェックリストにまとめます。希望ではなく実績で答えてください。

  1. 直近1年で、ホームページを何回更新しましたか?(数えられないなら「ほぼ0回」です)
  2. その更新を実際に操作したのは誰ですか?(名前が挙がらないなら、更新の主体は社外です)
  3. これから1年で増えるページはありますか?(記事・実績・商品などが増え続けるか)
  4. 会員・予約・ネット販売の予定はありますか?(時期と担当が具体的に見えているか)
  5. 更新の通知が来たとき、押していいか判断するのは誰ですか?(社内でも保守担当でもよい)

判定はこうです。1が月2回以上・2に名前がある・3がある——そろえばCMS側。1が月1回以下、2で名前が挙がらない、または3が「増えない」——このいずれかなら静的側から始めて問題ありません。4に予定があるなら、頻度に関わらず最初からその前提で設計します。5に答えられないなら、道具より先にそこを決めます。

最後に順序の話を。静的サイトから始めて後からCMSに移すことは可能です。文章と写真はそのまま持ち運べます。逆に、CMSで作り込んだ後に静的へ移すのは手間が大きい。引っ越しにたとえるなら、荷物が少ないうちに移るほうが安く済むのと同じです。迷ったら軽いほうから始め、必要になったら足す——これが手戻りの少ない順序です。

私たちの見解|CMSは「更新の設計」の一部

ここからは、日々ウェブサイトを運用している立場からの見解を3つ。

1つ目は、道具の議論を運用の議論に戻すこと。「WordPressか、そうでないか」は「更新をどう回すか」という問いの一部でしかありません。道具の話は具体的で分かりやすく、そこだけが議論の中心になりがちです。決める順序は、①誰が更新するか ②何を何回更新するか ③その体制に合う道具はどれか。③から始めると、たいてい合わないものを選びます。

2つ目は、「いつか使うかも」で仕組みを買わないこと。AI導入の相談で繰り返し目にする失敗と同じ構造です。将来使うかもしれない機能のために今の複雑さを引き受けると、管理コストだけが確実に発生します。同じ落とし穴はAI導入が失敗する典型パターンの記事にもまとめました。原因は共通で、判断が「使う場面」ではなく「機能の多さ」で行われていることです。

3つ目は、更新が続く仕組みを道具より先に決めること。誰が書き、いつ書き、誰が確認して公開するのか。この流れが決まっていれば道具は後から選べ、なければどんな高機能なCMSでも更新は止まります。発信の仕組み化は中小企業のマーケティング業務をAIで仕組み化する設計、問い合わせ対応の負荷軽減はFAQ・チャットボットの設計記事、外部と組む際の見極め方はパートナー選びのガイドで扱っています。

「うちの場合はどちらなのか」がはっきりしないときは、無料相談で一緒に整理させてください。ご用意いただきたいのは見積書ではなく、直近1年の更新回数と、更新を頼まれる人の名前の2つだけです。

まとめ

答えを持っているのは世の中の平均値ではなく、直近1年の更新回数と、更新を頼まれる人の名前です。まずはその2つを確かめてください。

よくある質問

Q1. ホームページにWordPressは必要ですか?

すべてのホームページに必要というわけではありません。WordPressは「管理画面から自分で更新するための仕組み」なので、更新を自分たちでやらない会社、更新が年に数回の会社、ページが増えない会社では、その仕組みが使われないまま維持だけが残ります。判断の物差しは「誰が・何を・何回更新するか」の3つです。社内に更新する人がいて、月2回以上更新し、記事や実績などページが増え続けるならCMSが活きます。1つでも当てはまらないなら、管理画面を持たない静的サイトで足りる可能性が高いと考えてよいでしょう。

Q2. 「WordPressはSEOに強い」は本当ですか?

Googleの公式ドキュメントに、特定のCMSを優遇するという記述はありません。Google検索の基本事項が示す技術要件は「Googlebotがブロックされていないこと」「HTTP 200が返ること」「インデックス登録可能なコンテンツがあること」の3つだけで、どのCMSで作ったかは含まれていません。Googleのジョン・ミューラー氏も、検索システムはページがどう作られたかではなく最終的な結果を見る、という趣旨を説明しています(Ask Googlebot・2022年7月、Search Engine Journalの記事による)。ただしWordPressは初期状態でSEOの土台を整えやすく、それが「強い」と体感される理由になっています。加点ではなく減点回避、と理解するのが正確です。

Q3. WordPressをやめて静的サイトにすると検索順位は下がりますか?

CMSを変えたこと自体が順位を下げるという公式見解はありません。順位に影響するのは、URLが変わる、ページが減る、本文が短くなる、表示が遅くなるといった「中身と技術要件の変化」のほうです。同じURLで同じ内容を保ち、サイトマップと構造化データを引き継げば、作り方が変わったこと自体は論点になりません。移行時は、旧URLの一覧を作り、消すページと残すページを決め、変わるURLに転送を設定する、という手順を先に決めておくと安全です。

Q4. 今あるWordPressサイトを放置するとどうなりますか?

更新が止まった状態が続くと、既知の弱点が残ったまま公開され続けます。Patchstackの2026年レポートでは、2025年に新しく報告されたWordPress関連の脆弱性は11,334件、その91%はプラグイン由来、本体は6件でした。弱点の公表から最初の攻撃が観測されるまでの加重中央値は5時間とも報告されています。使っていないプラグインとテーマを削除する、更新を月1回まとめて行う、バックアップの復元を一度試す——この3つだけでも状態は大きく変わります。

参照元・出典

本記事は2026年8月4日時点の公開情報にもとづきます。行政資料・公式ドキュメント・調査主体の公表レポートを一次、報道や解説メディアの紹介記事を二次として区別し、数値は公表値をそのまま引用しています。

一次ソース

二次ソース(発言・データの紹介記事)

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