ホームページ制作会社の選び方|契約書だけに現れる危険サイン10と確認ポイント
ホームページ制作会社を探し始めた方に、最初に3分だけ使ってほしい確認があります。いま候補にしている会社について、次の5つに「はい」と答えられるでしょうか。
- 完成したホームページの著作権が誰のものになるか、書面で確認した
- ドメインの名義を自社にすると、契約書に書いてある
- 解約したいとき、何か月前に、どんな方法で伝えればいいか知っている
- 解約したあと、原稿・写真・データのどこまでを受け取れるかが決まっている
- その内容を、営業担当の口約束ではなく契約書の条文で読んだ
1つでも「いいえ」があるようでしたら、発注はもう少しだけ待ってください。この5つはどれも、制作会社のホームページや提案書には載っていません。契約後に問題として表面化しやすいのはこのあたりなのに、比較検討の段階では誰も見せてくれない。それがホームページ制作会社の選び方でいちばん見落とされている場所です。
この記事では、デザインの好みや料金の安さといった「見えるもの」ではなく、契約書にしか現れない危険サインから制作会社を見抜く方法をまとめました。専門用語はそのつど日常のものに置き換えて説明しますので、Webにくわしくない方でも読み進められます。なお、費用の相場そのものや、月額制という契約形態の細かい審査は本記事では扱いません。ここでは「どの会社に頼むか」の一点にしぼります。
この記事が言いたいこと(先に結論)
制作会社は「作る力」ではなく「別れ方」で選んでください。差がつくのは、担当者が変わったとき、思ったより成果が出なかったとき、そして他社に移りたくなったときです。その扱いは、営業トークではなく契約書の数行だけが決めています。だから比較の順番は、デザイン→料金→契約書ではなく、要望の整理→見積の分解→契約書のひな形。ひな形を先に見せてくれるかどうかが、最初のふるいになります。
ホームページ制作会社の選び方は「三つの層」で決まる
制作会社を比べるとき、見ている情報には深さの違う三つの層があります。層ごとに「いつ分かるか」が違うので、意識するだけで比較の精度が上がります。
第1層は誰でも比べられます。制作実績のページを開けば、得意な業種や見た目の傾向はすぐ分かる。第2層も、面談で質問すればかなり見えてきます。問題は第3層です。相手から差し出されない限り見えないうえ、契約書という読みにくい形でしか存在しません。制作会社の選び方を解説した業界メディアのまとめ(Web幹事)でも、実績・提案力・見積の透明性・アフターフォロー・担当者との相性といった第1層と第2層の比較ポイントが中心で、契約条項の中身は別記事に分けて扱われています。
家を建てるときにたとえるなら、第1層は内装の写真、第2層は工務店の段取り、第3層は土地の権利書です。内装がどれだけ気に入っても、権利書の名義が自分でなければその家は自由に使えません。第3層を確認せずに進めた発注は、やめようとした瞬間に止まります。
実際に数えてみました。2026年7月26日にGoogleで「月額制ホームページ制作」「サブスク ホームページ制作」と検索し、上位に出たページから比較まとめ記事を除いて、料金を公開している制作会社のサービスページ7件(当社は含みません)を対象に、①最低契約期間②中途解約時の費用③ドメインの登録者名義④解約後のデータの扱い、の4点がそのページに書かれているかを数えました。「縛りなし」「0円」のように条件が明記されていれば、書かれている扱いです。結果は①5件、②3件、④3件、そして③のドメイン名義に触れていたのは7件中1件。社名は挙げませんし、検索結果は日々変わるので件数はぶれます。それでも、いわば値札は全部出ているのに権利書の話だけ見えない、という傾向は数え直しても変わりませんでした。公開ページにないだけで契約書には書いてある場合もありますから、これは「聞かないと分からない」という意味です。
なぜ契約書なのか|会社としての契約に消費者保護は原則効かない
「困ったら消費生活センターに相談すればいい」と思っている方は少なくありません。しかし、会社や個人事業として結んだ契約では、その前提が崩れます。
まず、訪問販売や電話勧誘販売のクーリング・オフを定めた特定商取引法は、営業のために、または営業として締結する契約を適用除外としています。消費者庁の特定商取引法ガイドは、この根拠を第26条第1項第1号として説明しています(訪問販売等の適用除外に関するQ&A)。同ガイドは、お金を稼ぐ意思があることだけで直ちに「営業のために/営業として」に当たるわけではないとしており、取引の種類や利益活動との関連性、必要な設備を準備しているかなどを総合的に見て判断するとしています。とはいえ、事業のためのホームページ制作を発注する場面は、原則として適用除外側に寄ると考えておくのが安全です。
相談窓口も分かれています。東京都の消費生活相談は、応じられない例として「事業者の方からの事業に関する相談、営利目的の相談」「個人で恒常的に事業を行っている方からの事業に関する相談」を明記しています(東京くらしWEB・消費生活相談)。同じ契約でも、個人として結べば相談でき、会社として結ぶと窓口が変わります。
国民生活センターの調査報告書「消費生活センターにおける解決困難事例の研究」(令和5年3月)でも、被害回復を求める場面では契約書の「営業として」という適用除外の記載や、事業者かどうかという論点が相手方から持ち出され、争いになりやすいことが整理されています。この報告書が扱っているのは起業・副業をめぐる勧誘トラブルで、ホームページ制作ではありません。それでも、いったん事業者として結んだ契約は、契約書の文言が判断の出発点になるという構造は共通しています。
では中小企業はどこに相談すればいいのか。中小企業庁の委託事業である取引かけこみ寺(2026年1月に下請かけこみ寺から名称変更)は、中小企業・個人事業主・フリーランスの取引上の相談を無料・秘密厳守で受け付けており、全国48か所に窓口があります。弁護士への相談枠もあります。ただし、ここでも判断材料になるのは契約書です。制度に守られる前提で選ぶのではなく、契約書で自分を守る前提で選ぶ。会社としてホームページを発注するというのは、そういう場所に立つことです。
この構造は、外部の会社に何かを任せるときはいつも同じです。判断軸の作り方は中小企業のAI導入パートナーの選び方でも整理しています。外注先選びで迷っている方はあわせてどうぞ。
契約書だけに現れる危険サイン10(チェック表)
ここからが本題です。契約書のひな形をもらったら、次の10か所だけ確認してください。全文を法律的に読み解く必要はありません。この10項目は、いずれも「書いていない」ことが危険サインになるという共通点があります。探して見つからなければアウト、という読み方でよく、専門知識がなくてもできます。
※この表は横にスクロールできます(全4列)。
| 危険サイン | 契約書での見え方 | 起きること | こう聞けばいい |
|---|---|---|---|
| ① 著作権の帰属 | 条項そのものがない、または「制作者に帰属する」とだけ書いてある | 自社のサイトなのに、文章やデザインを自由に作り替えられない | 「著作権は当社に譲渡でお願いできますか。27条と28条も含めてください」 |
| ② ドメイン名義 | 「弊社にて取得・管理する」とだけ書かれ、名義人の指定がない | 移転したいときに移管に応じてもらえず、URLを捨てることになる | 「登録者名義は当社にしてください。管理代行という形は可能ですか」 |
| ③ 自動更新と予告期間 | 「期間満了の3か月前までに書面で申し出なければ同一条件で更新」 | 言い出すのが1日遅れただけで、もう1年分の支払いが確定する | 「解約の申し出はメールでも有効にしてもらえますか。予告は1か月前で足りますか」 |
| ④ 中途解約の扱い | 「残存期間の月額料金相当額を一括して支払う」 | 成果が出なくても、契約期間が終わるまで抜けられない | 「解約したい場合、最大でいくら払う必要がありますか。金額で教えてください」 |
| ⑤ みなし検収 | 「納品後◯日以内に通知がない場合、検収に合格したものとみなす」 | 出張や繁忙期をはさむと、確認しないまま合格が確定する | 「確認期間を10営業日にできますか。開始はメール到達日でお願いします」 |
| ⑥ 納品物の定義 | 「ウェブサイト一式」としか書かれていない | 解約時に、画面は見られるがデータは渡らない、という状態になる | 「納品物に、原稿・画像の元データ・サイトのファイル一式を書き足せますか」 |
| ⑦ 写真・素材の権利 | 使用素材の出どころとライセンスの主体が書かれていない | 契約終了と同時に、写真やフォントが使えなくなる | 「使う写真とフォントは、契約終了後も当社が使い続けられますか」 |
| ⑧ 保守の範囲 | 「保守については別途協議のうえ定める」 | 公開後の小さな修正がすべて追加見積になり、更新が止まる | 「月に何回まで、どこまでの修正が料金に含まれますか。例を3つください」 |
| ⑨ 合意管轄 | 「◯◯地方裁判所を専属的合意管轄裁判所とする」(遠方) | 移動と時間の負担で、事実上あきらめることになる | 「管轄は当社所在地の裁判所にできますか。難しければ理由を教えてください」 |
| ⑩ 再委託と体制 | 再委託の可否も、担当者交代時の引き継ぎも書かれていない | 担当者が辞めた瞬間に、誰も中身を知らない状態になる | 「再委託先はどこですか。担当者が変わるときの引き継ぎ方法を教えてください」 |
この表の使い方はシンプルです。ひな形を印刷し、10項目の該当箇所に蛍光ペンを引く。見つからなければ余白に「なし」と書く。それを持って面談に行き、右端の質問をそのまま読み上げる。ここで気持ちよく直してくれる会社かどうかが、実は最大の判断材料です。条項の中身より、変更を申し出たときの反応のほうが、その会社との今後を正確に予告します。
とくに事故が多い3つの条項を詳しく
① 著作権は、お金を払っただけでは移らない
いちばん誤解が多いのがここです。文化庁の「誰でもできる著作権契約マニュアル」は、この点をはっきり書いています。制作を依頼した場合であっても、完成した著作物の著作権を依頼した側が取得したことにはならず、著作権を取得するには契約で合意しておく必要がある、という趣旨です。同マニュアルは、絵画を買っても所有権を得るだけで著作権は得られない、という例で説明しています。ホームページも同じで、代金を払って納品を受けても、中身の権利は動きません。
さらに落とし穴があります。契約書に「著作権を譲渡する」と書いてあっても、それだけでは足りない場合があります。同マニュアルは、著作権の全部を譲渡するには「著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む」と明記する必要があり、明記しない場合は二次的著作物に関する権利は譲渡の対象ではないと推定される(著作権法第61条第2項)と説明しています。第27条は翻訳や翻案など作り替える権利、第28条はその作り替えたものを使う権利です。
実務ではどう効くか。この一文がないと、あとから自社でページを書き換えたり、別の制作会社にリニューアルを頼んだりする段で、権利関係の確認が必要になることがあります。たとえるなら、家を買ったのに増改築だけは元の大工さんの承諾がいる状態です。契約書に「著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む」の一行があるか。ここだけは契約前に必ず目で見て確認してください。文化庁は著作権契約書作成支援システムという、質問に答えると契約書のひな形ができる無料の仕組みも公開しています。
② ドメイン名義は、公開後に自分の目で確かめる
ドメインは会社の住所と表札にあたるものです。名刺、チラシ、看板、Googleマップ、取引先のブックマーク——そのすべてが指す先が、このドメインです。ここが制作会社の名義だと、契約が終わったときに移管交渉が必要になり、応じてもらえないと使い続けられません。住所を変えるのと同じ手間が、あらゆる印刷物に発生します。
厄介なのは、「弊社にて取得・管理いたします」と書かれていても、名義まで制作会社になる意味なのか、単に手続きの代行なのかが読み取れないことです。だから確認は二段構えにします。契約前に「登録者名義は当社にしてください」と伝えて書面に残す。公開後に、JPRSのWHOIS検索などで実際の登録者を自分の目で見る。co.jpなどの属性型JPドメイン名は登録者名が必ず公開されるので、確認は数十秒で終わります(.jpでは登録者名を非表示にできる設定があるため、表示されない場合は制作会社に登録者名義を確認してください)。この一手間だけで、将来の詰まりの多くは防げます。
③ 検収の期間は「連絡しなかった」だけで確定する
検収とは、納品されたものを確認して合格・不合格を伝える手続きです。多くの契約書には「納品後◯日以内に連絡がない場合は合格とみなす」という条項が入っています。これ自体は制作会社側の正当な自衛です。問題は期間の短さと、起算日の曖昧さにあります。
経済産業省の研究会をもとにIPAが公開している「情報システム・モデル取引・契約書」でも、検収の完了時点を客観的な起算点として置くことで、発注側に適切な検査を行うきっかけを与える、という考え方が採られています。裏を返せば、検収は発注側が主体的にやる前提の仕組みだということです。3営業日という設定は、繁忙期をはさむと簡単に溶けます。ちょうど返品期限が極端に短いネット通販のように、気づいたら期限切れになる。10営業日程度を目安に交渉し、起算日を「メールが届いた日」と明記してもらえば、事故の確率はかなり下がります。
ホームページ制作会社に聞く7つの質問と、答えの読み方
ひな形をもらえない段階でも、質問の仕方しだいで第3層はかなり見えます。以下の7つは答えが具体的な言葉に変換できるかを見る質問です。答えの中身より、答え方を見てください。
| 聞くこと | 安心できる答え方 | 注意したい答え方 |
|---|---|---|
| 契約書のひな形を、いま見せてもらえますか | その場か翌営業日にPDFが届く | 「ご契約時にお渡しします」で止まる |
| やめたいとき、いつまでに何を伝えればいいですか | 期限・方法・費用を数字で即答する | 「やめる方はいませんよ」と話をそらす |
| 解約したら、何を返してもらえますか | 原稿・画像・ファイル一式と具体的に列挙 | 「ご相談ください」の一言で終わる |
| ドメインの登録者名義は誰になりますか | 「御社名義です」と即答し理由も説明する | 「弊社で管理するので大丈夫です」 |
| 月額に含まれる修正は、どこまでですか | 含む例と含まない例を各3つ挙げられる | 「だいたい何でも大丈夫です」 |
| 担当の方が変わるときはどうなりますか | 引き継ぎ資料と連絡窓口の仕組みを説明 | 「私がずっと担当します」で終わる |
| この見積で、来年かかる費用は合計いくらですか | 年額と内訳をその場で計算して示す | 「運用しだいですね」と幅で答える |
とくに注目したいのが2番目、「やめたいとき」の質問です。まだ始めてもいないのに終わりの話をするのは失礼かもしれない、と感じる方は多い。けれど、賃貸物件を借りるときに退去の条件を聞かない人はいません。それと同じ性質の確認だと考えると、聞きやすくなるはずです。ここで気分を害する会社は、契約後にもっと言いにくいことを言えなくなる相手でもあります。
外部の会社を審査する型は、業種を問わず似ています。専任の担当者がいなくても問いを立てられる形として、AIベンダーのセキュリティを見極める設計も参考になります。
見積書の読み方|「一式」を4つに割ってもらう
見積書で最も危ないのは、高い金額ではなく「制作一式」という一行です。中身が分からない金額は、他社と比べようがありません。レストランの伝票に「お食事一式」とだけ書いてあるようなもので、判断する材料がないのです。
そこで、見積を依頼するときに「この4分類で書いていただけますか」とお願いします。①作る費用、②載せる費用、③続ける費用、④出ていく費用。この形で並べると各社の数字が同じ軸に乗るので、はじめて比較が成立します。とくに④は、どの見積書にも書かれていないのに、いちばん金額差が出ます。解約時の費用、データを受け取る費用、他社に移す作業費。ここを最初に聞いておけば、あとで「聞いていない請求」は生まれません。
安さの理由を知ることも大切です。極端に安い見積は、③や④が抜けていることが少なくありません。その金額で誰が何時間ぶん動くのかを聞いてください。内製か外注かで迷っている方は、判断材料の作り方を内製と外注の判断軸をまとめた記事でも整理しています。
失敗しない比較のコツ|3社を同じ土俵に乗せる5ステップ
比較がうまくいかない原因のほとんどは、各社に違う情報を渡していることです。それで出てきた見積を比べても、意味のある差にはなりません。次の5ステップで、同じ土俵をつくります。
ステップ1の「1枚」は、きれいな提案依頼書である必要はありません。A4に手書きで、①何のために作るのか、②いつまでに公開したいか、③予算の幅、④いま困っていること、この4つが書いてあれば十分です。同じ紙を3社に渡すだけで、返ってくる提案の質の差がはっきり見えます。
ステップ5も軽く扱わないでください。面談で「そこは柔軟に対応しますよ」と言われた内容は、契約書に反映されて初めて意味を持ちます。面談後に「本日うかがった内容の確認です」とメールを1通送るだけでいい。相手が「その通りです」と返信すれば、それが記録になります。導入プロジェクトが失敗する会社の共通点を見ていくと、決めたはずのことが書面に残っていない、という原因が目立ちます。ホームページでも同じです。
私たちの契約条件を先に開示します
契約書を先に見せてくれるかで判断してくださいと書いてきた以上、自分たちの条件を伏せたままでは筋が通りません。AI Lab OISHIが提供している月額制のホームページ制作サービスの契約条件を、この記事の10項目に沿って開示します。
- ドメイン名義:最初からお客様の名義で取得します(②に対応)
- 最低契約期間:設けていません。いつでも解約でき、違約金もありません(③④に対応)
- 初期費用:0円。お支払いはサイト公開日からで、制作期間中は無料です
- 解約後のサイト:30日間は表示を継続します。切り替え期間として使えます
- データのお渡し:1年以上ご利用の場合は無料でお渡し。1年未満の場合は制作費の残額(最大66,000円、毎月5,500円ずつ減っていきます)を清算のうえお渡しします(⑥に対応)
- 対応範囲外:ネットショップ、予約決済、会員機能、多言語対応は承っていません
1年未満で解約する場合に清算金が発生する点は、率直に言えばお客様側に有利な条件ではありません。それでも金額と減り方を先に書いているのは、後から知らされる条件が一番よくないと考えているからです。ここに書いた条件は契約書にもそのまま入っており、契約前にお渡しします。この記事の10項目を、そのまま当社にもぶつけてください。答えられないところがあれば、それも含めて判断材料にしていただければと思います。
私たちの見解|選ぶのは「作る人」ではなく「別れ方」
制作会社選びの記事の多くは「実績を見る」「提案力を見る」「担当者との相性を見る」と書いています。どれも正しい。ただ、これらはすべてうまくいっている前提の基準です。うまくいかなかったときにどうなるかで選ぶほうが、結果的に良い相手に当たると考えています。理由は3つあります。
1つ目は、ホームページは5年10年と使う資産だからです。その間には担当者の交代も業績の波も起こります。作る力は最初の3か月にしか効きませんが、契約条件はその後ずっと効きます。いわば、料理の腕前より、店を出るときの会計方法を先に確認しておくようなものです。
2つ目は、条件を開示できる会社は、たいてい仕事も丁寧だからです。解約条件やドメイン名義をはっきり書けるのは、契約が終わったあとに困る人が出ない設計になっている証拠で、制作の進め方にも表れます。契約書は、その会社の仕事の仕方が一番正直に出る書類です。
3つ目は、聞くことのコストがほぼゼロだからです。この記事の10項目を確認する時間は、1社あたり30分程度。それで防げるのは、数年分の支払いと、URLを捨てる判断です。費用対効果でこれ以上のものは、発注前にそう多くありません。
次に問われるのは「どこに頼むか」ではなく「どう手放せる状態で持つか」だと思っています。手放せる状態なら、制作会社を替えることも自社運用に切り替えることも、事業の判断としてできます。逆に手放せないと、ホームページのほうが会社の判断を縛りはじめます。失敗しない選び方の基準を一つだけ持ち帰るとしたら、そこをおすすめします。
まとめ
- 比較の第3層を見る:デザイン・実績・料金(第1層)と体制・保守(第2層)は誰でも比べられる。差がつくのは契約書にしかない第3層(著作権・ドメイン名義・解約・引き渡し)
- 会社としての契約に消費者保護は原則効かない:特定商取引法は営業のための契約を原則として適用除外とし(第26条第1項第1号)、消費生活センターも事業に関する相談は対象外。頼れるのは契約書
- 危険サインは10か所:著作権の帰属/ドメイン名義/自動更新/中途解約の一括請求/みなし検収/納品物の定義/素材の権利/保守範囲/合意管轄/再委託。いずれも「書いていない」ことが危険サイン
- 著作権は払っただけでは移らない:譲渡の合意が必要で、全部を譲渡するには第27条・第28条を含むと明記する必要がある(著作権法第61条第2項)
- 見積は4分類で出してもらう:作る・載せる・続ける・出ていく。とくに「出ていく費用」はどの見積書にも書かれていないのに差が大きい
- 相談先は事業者向けの窓口:中小企業庁の委託事業である取引かけこみ寺が全国48か所。無料・秘密厳守で相談できる
最後に、今日からできることを1つだけ。候補にしている制作会社に、契約書のひな形を見せてほしいとメールを1通送ってください。返信の速さと中身で、多くのことが分かります。文面に迷う方は下をどうぞ。
そのまま送れる依頼メールの例
件名:契約書のひな形の事前確認について
〇〇株式会社 ご担当者さま
ホームページ制作を検討している△△と申します。比較検討の段階で、契約書のひな形を拝見できますでしょうか。金額欄は空欄のままで問題ありません。とくに著作権の帰属、ドメインの登録者名義、解約の申し出方法の3点を確認したいと考えております。今週中にご返信いただけますと助かります。
そこから先の判断は、この記事の10項目が支えてくれるはずです。
よくある質問
Q1. ホームページ制作会社を選ぶとき、いちばん先に見るべきものは何ですか?
契約書のひな形です。デザインや実績は各社のサイトで簡単に比べられますが、著作権が誰のものになるか、ドメインの名義をどちらにするか、やめたいときにいつまでに何を言えばいいのかは、契約書にしか書かれていません。そして発注後に説明を求められることが多いのがこの部分です。順番としては、要望を1枚にまとめる、見積を出してもらう、その次に必ず契約書のひな形を先に見せてもらう、という流れをおすすめします。ひな形を見せられない会社は、その理由を聞いてから判断してください。
Q2. 契約書のひな形を見せてもらえない場合はどうすればいいですか?
まず、なぜ見せられないのかを聞いてください。制作範囲が固まらないと出せない、という説明であれば、金額欄が空欄のままの版で構わないと伝えれば多くの場合は出てきます。それでも契約時まで見せられないという回答なら、その一社は候補から外すという判断で問題ありません。契約書は署名する直前ではなく、比較している段階で読むものだからです。なお口頭で「著作権はお渡しします」と言われた場合は、その一文を見積書やメールに書き足してもらい、記録として残してください。
Q3. ドメインの名義は、なぜ自社にしておく必要があるのですか?
ドメインは会社の住所と表札にあたるもので、名義人が管理の主導権を持つからです。制作会社の名義で登録されていると、契約が終わったあとに移管に応じてもらえない、そもそも登録先の情報を教えてもらえない、といった行き詰まりが起こり得ます。名刺やチラシに刷った住所が使えなくなるのと同じ状態です。契約前に「登録者名義は当社にしてください」と伝え、公開後はJPRSのWHOIS検索などで自社名義になっているかを実際に確認しておくと安心です。
Q4. 中小企業が制作会社ともめたとき、どこに相談できますか?
事業のための契約は消費生活センターの相談対象外とされているため、事業者向けの窓口を使います。中小企業庁の委託事業である取引かけこみ寺は、中小企業・個人事業主・フリーランスからの取引上の相談を無料・秘密厳守で受け付けており、全国48か所に設置されています。弁護士への相談枠も用意されています。相談する前に、契約書、見積書、やり取りのメール、支払いの記録を時系列に並べておくと話が早く進みます。
参照元・出典と、この記事の作り方
この記事は、2026年7月時点で公開されている行政資料・法令・公式ドキュメントを読み、中小企業の発注実務に落とし込んで構成しました。一次資料と二次情報は下記のとおり区別しています。個別の契約の法的な判断は、弁護士など専門家にご相談ください。最終更新は2026年7月28日です。
一次資料(行政・法令・公式)
- 訪問販売等の適用除外に関するQ&A(消費者庁・特定商取引法ガイド)
- 誰でもできる著作権契約マニュアル(文化庁著作権課・PDF)
- 著作権契約書作成支援システム(文化庁)
- 改正民法に対応した「情報システム・モデル取引・契約書」(IPA)
- 消費生活センターにおける解決困難事例の研究(国民生活センター・令和5年3月・PDF)
- 消費生活相談(東京くらしWEB・東京都)
- 取引かけこみ寺事業(全国中小企業振興機関協会・中小企業庁委託事業)
- JPRS WHOIS(日本レジストリサービス)
二次情報(業界メディアのまとめ)