2026.08.01 · 17分で読める

公認会計士の監査業務をAIで効率化|調書作成・分析的レビューの実装設計【2026年版】

監査の「下準備」は、人がすべて抱え込まなくてよい

「期末監査の時期になると、証憑を一枚ずつ突き合わせる作業に何日も追われる」「会計基準や開示チェックリストを確認しながら、調書を一から書き起こす負担が重い」——公認会計士事務所や監査法人では、こうした声が珍しくありません。専門性の高い判断を担う一方で、その手前には膨大な単純作業が積み上がります。人手は限られているのに、繁忙期の負荷は待ってくれません。少人数で回している事務所ほど、一件の突合、一通の調書が、本来集中すべき判断業務の時間を削っていきます。

ここで大切なのは、監査業務を「すべて公認会計士が手作業で抱える」ものと思い込まないことです。実際、監査の工程には、証憑の読み取りと突合、仕訳データの並べ替えと異常値の洗い出し、基準の参照、調書のたたき台づくりといった、答えに至る前の「下準備」が数多くあります。こうした繰り返しの前さばきをAIに任せ、公認会計士は職業的懐疑心を働かせる判断と、最終的な監査意見の形成に集中する——この役割分担が、監査業務を効率化する設計の出発点になります。これはいわば、料理人が下ごしらえを助手に任せ、自分は火加減と味の決定に専念するようなものです。包丁を研ぐのも野菜を刻むのも大切な工程ですが、その味を最終的に保証するのは料理人だけです。

業界全体でも、この流れは現実のものになりつつあります。EY新日本有限責任監査法人は、2026年1月、生成AIを組み込んだ書類解析システムを本格運用し、担当する全被監査先に対象を広げたと公表しています(EY Japan ニュースリリース)。証憑の読み取りから会計データとの突合、調書作成までを一貫して支援する仕組みです。一方で、日本公認会計士協会は、公認会計士の本質はAIに代替できないと述べています(日本公認会計士協会「公認会計士業務とAI」)。つまり、作業はAIに任せても、監査の根幹である判断と責任は人に残る——この線引きを最初に設計することが、効率化の成否を分けます。

本記事では、横浜・川崎の公認会計士事務所・監査法人を念頭に、監査業務をAIで効率化する設計を、できるだけ平易に解説します。証憑突合と仕訳データ分析の下準備、監査調書のドラフト支援、会計基準・開示チェックリストの横断検索、異常仕訳の一次スクリーニング、往査メモの整理、内部統制文書のレビュー支援という6つの場面を、「何をAIに任せ、何を人が担うか」の線引きとともに整理します。あわせて、導入手順、効果の目安、コスト感、そして守秘義務や誤りを防ぐリスク対策まで、一通り見ていきましょう。なお、本記事は将来に向けた実装設計を整理したものであり、特定の成果を保証するものではありません。数値はあくまで目安・想定としてお読みください。

この記事を読むとわかること

  • 監査業務をAIで効率化できる6つの場面と全体像
  • 証憑突合・仕訳データ分析(分析的実証手続)の下準備の設計
  • 監査調書のドラフト支援と、会計基準の横断検索の使い方
  • 異常仕訳・例外項目の一次スクリーニングと内部統制文書のレビュー
  • 監査意見・職業的懐疑心・独立性・守秘義務という人が担う線引き
  • 導入手順・効果の目安・コスト感・使える補助金

目次

監査業務AI化の全体像と「人が担う一線」

まず、監査業務のAI化を整理する前に、税理士業務との違いをはっきりさせておきます。税理士の中心は、申告書の作成や記帳代行といった税務であり、AI活用の設計も税理士事務所のAI確定申告ロードマップで別途整理しています。これに対し、公認会計士の独占業務である監査は、企業が作った財務諸表が適正かどうかを第三者の立場から検証し、意見を表明する「保証業務」です。同じ会計の専門職でも、申告を「作る」税理士と、その適正性を「検証する」公認会計士とでは、AIに任せられる範囲も、絶対に人が守るべき一線も異なります。本記事は、後者の監査・保証業務に焦点を当てます。

そのうえで、監査業務のAI化を「6つの場面」として整理します。一度にすべてを導入する必要はなく、自社の繁忙期の困りごとに近いところから手をつければ十分です。6つは独立した使い方であると同時に、つなげると監査の一連の流れに沿います。証憑を読み、データを分析し、基準を確認し、調書を起こし、内部統制を点検する——この各工程の「下準備」をAIが助ける、という構図です。

場面 AIが担う下準備 人が担う判断
証憑突合・仕訳分析 証憑読取・会計データとの照合・趨勢/比率分析 差異の意味づけ・追加手続の要否
調書ドラフト 手続記録のたたき台作成・要約 記載の妥当性確認・証拠の十分性
基準の横断検索 会計基準・チェックリストの参照と整理 適用の最終判断・解釈
一次スクリーニング 異常仕訳・例外項目の洗い出し 不正/誤謬リスクの評価・精査
内部統制レビュー 統制文書の読込・論点の抽出 統制の有効性評価
往査メモ整理 質問事項・メモの構造化と整理 質問設計・経営者への対応

出典:監査業務でAIが担いやすい下準備と、人が担うべき判断を、本ブログの実務知見と公的・調査情報をもとに6場面に整理した(目安)。

この6場面を貫く考え方は、「下準備はAI、判断は人」というシンプルな線引きです。監査の根幹には、監査人としての判断を歪める影響を受けない独立性と、監査証拠を鵜呑みにせず批判的に評価する職業的懐疑心があります。日本では、不正リスクへの対応において職業的懐疑心を保持し発揮することが基準上も強調されています(監査における不正リスク対応基準(金融庁))。これらは、AIに肩代わりさせられない人の役割そのものです。AIがどれだけ証憑を速く読もうと、その分析結果を「これは監査証拠として十分か」と疑い、最終的な監査意見を形成する責任は、公認会計士に残ります。便利な計算機が普及しても、計算式を立て答えに責任を持つのは人であるのと同じです。職業的懐疑心とは、いわば「本当にそうか」と一歩立ち止まって問い直す目のようなもので、この目を働かせ続けることが監査人の核になります。

図1: 監査業務における「AIの下準備」と「人の判断」 AIが担う下準備 証憑の読取・突合 仕訳データの分析 調書のたたき台作成 基準・文書の検索整理 速く・大量に・前さばき 公認会計士が担う判断 職業的懐疑心の発揮 独立性の保持 監査証拠の十分性評価 監査意見の形成・表明 判断・責任・守秘 材料を渡す 下準備はAI、監査意見と責任は人に残す

もう一つ、全体像で押さえておきたいのが順番です。いきなり高度な分析ツールを入れる前に、守秘義務を守れる安全な利用環境を整えることが先決です。被監査会社の財務データや未公表情報を扱う以上、入力した内容が外部に漏れたり学習に使われたりしない仕組みが大前提になります。鍵のかかる金庫を用意してから貴重品を入れるのと同じで、器が安全でなければ、どんなに便利な道具も使えません。次の章から、6つの場面を一つずつ見ていきます。

証憑突合・仕訳データ分析の下準備

最初の場面は、証憑突合と、仕訳データを使った分析的実証手続(分析的レビュー)の下準備です。監査では、請求書や契約書といった証憑が会計記録と整合しているかを確かめたり、勘定科目の残高や比率を前期や予算と比べて不自然な動きがないかを調べたりします。この前さばきは、件数が多く時間がかかる典型的な作業で、AIが力を発揮しやすい領域です。

証憑の読み取りと突合をAIが下処理する

従来は、大量の証憑を一件ずつ開いて会計データと突き合わせていました。ここにAIを使うと、証憑の内容を読み取り、対応する会計記録と照合する下作業を肩代わりできます。前述のEY新日本の事例でも、証憑の読み取りから会計データとの突合、調書作成までを一貫して支援する仕組みが本格運用されています。さらに、独自開発の画像解析AIが証憑の信頼性を多角的に検査し、不自然な加工の兆候を検知するとアラートを出す機能も備えると公表されています(EY Japan ニュースリリース)。これは、宝石店の鑑定士が拡大鏡で一つずつ確かめていた作業を、まず機械で一斉に光に透かし、怪しいものだけを人の目に回す、というイメージです。すべてを機械任せにするのではなく、人の精査の前で母数を絞るのが役割です。

分析的手続は「異常の候補」をあぶり出す

仕訳データの分析的手続では、趨勢分析や比率分析によって、例年と違う動きや説明のつきにくい変動を見つけ出します。これは、たとえるなら健康診断の数値を前年と見比べて、急に上がった項目に印をつける作業に相当します。AIは、大量の数字を一気に整理し、目立つ動きを「候補」として並べることが得意です。広い砂浜から金属探知機で反応のある場所を絞り込むようなもので、どこを掘るべきかの当たりをつけてくれます。ただし、その反応が本当に問題なのか、それとも合理的な理由のある変動なのかを見極めるのは、公認会計士の仕事です。AIが挙げた候補を職業的懐疑心をもって吟味し、追加の手続が必要かを判断する——ここに人の判断が入ります。AIは探す手間を減らしますが、掘るかどうかを決めるのは人です。経理部門全体の業務効率化を含めた視点は経理を100時間削減するAI設計もあわせてご覧ください。

図2: 証憑突合と分析的手続の下準備フロー 証憑・仕訳データ 大量・多種類 AIが下処理 読取・突合・照合 趨勢/比率の分析 異常の候補を抽出 人が精査 意味づけ・ 追加手続の判断 AIが母数を絞り、掘るかどうかは人が決める

監査調書のドラフト作成支援

2つ目の場面は、監査調書のドラフト(たたき台)作成支援です。監査調書は、どんな手続を行い、何を確かめ、どう判断したかを記録する、監査の根拠そのものです。いわば、後から第三者がたどっても判断の道筋を再現できる「航海日誌」のようなもので、ここが空白だと結論を裏づけられません。一から文章を起こす作業には手間がかかりますが、生成AIに手続の内容や確認結果を渡して、決まった様式に沿った下書きを作らせれば、ゼロから書き始める負担を大きく減らせます。

この効果は、初動の速さに表れます。担当者は、白紙から調書を書き始めるのではなく、AIが用意したたたき台に目を通し、過不足を補い、表現を整えて仕上げる。文面を組み立てる手間が省ける分、一件あたりの作成時間が短くなります。これはいわば、報告書の下書きを誰かが先に用意してくれて、自分は事実確認と推敲に集中できる状態です。下書きが済んでいれば、本番の仕上げはぐっと速くなります。

ただし、ここでこそ線引きが決定的に重要です。AIが作るのは、あくまで「ドラフト」です。生成AIには、もっともらしい誤りを混ぜる弱点があり、判断根拠が見えにくくなる課題も指摘されています。そのため、AIの下書きをそのまま調書に採用することはできません。記載が事実と合っているか、根拠資料まで辿れるか、監査証拠として十分かを、公認会計士が自ら査閲し、責任を持って確定させる——この最終確認を省かないことが、監査品質を守る生命線です。AIに下書きは任せても、その内容を監査の根拠として認めるかどうかの判断は、人が握り続けます。料理にたとえれば、盛り付けの下地は助手が整えても、客に出してよいと判断するのは料理人だけ、ということです。

会計基準・開示チェックリストの横断検索

3つ目の場面は、会計基準や開示チェックリストの参照・横断検索です。監査では、ある会計処理が基準に照らして適切かを確かめるために、関連する基準や実務指針、開示項目のチェックリストを行き来します。膨大な文書の中から該当箇所を探す作業は、経験を積んだ会計士でも時間を要します。ここで生成AIに、基準や社内の参照資料を読み込ませ、「この論点に関係する基準はどれか」「この開示で漏れている項目はないか」を整理させると、調べものの初動が大きく速くなります。

これは、巨大な図書館で、目当ての棚まで案内してくれる司書のような働きです。どの本のどのあたりに答えがありそうかを示してくれるので、探す時間が短くて済みます。実際、Big4の一角でも、契約書や決裁文書を分析して会計上の論点となりうる事項を検出し、関連する会計基準も踏まえて助言につなげるツールの提供が始まっています(KPMGジャパン 生成AIを活用した会計上の論点抽出サービス(2024年12月))。論点の「当たり」をAIがつけ、その妥当性を会計士が確かめる、という分担です。

もっとも、AIが示した基準や論点を、そのまま結論にしてはいけません。会計基準の適用には解釈の余地があり、個別の事実関係に応じた判断が欠かせないからです。AIが見つけてくれた候補を起点に、本当にその基準が当てはまるのか、ほかに考慮すべき点はないかを、公認会計士が自分の頭で検討する。司書が棚を教えてくれても、どの本を根拠に採用するかを決めるのは読み手である、という関係です。AIの横断検索は、判断の質を高めるための時間を生み出す道具として位置づけるのが適切です。

図3: 基準の横断検索における役割分担 AIが探す(司書役) 基準・指針の横断検索 関係する論点の抽出 開示漏れの候補提示 当たりをつける 会計士が決める 基準適用の解釈 事実関係に照らす判断 採用する根拠の確定 結論を出す 候補 探すのはAI、適用を決めるのは公認会計士

異常仕訳・例外項目の一次スクリーニング

4つ目の場面は、異常仕訳や例外項目の一次スクリーニングです。不正や誤謬の兆候を見つけるために、監査では仕訳の中から不自然なものを抽出します。たとえば、決算日直前の大きな振替、通常使わない勘定の組み合わせ、休日や深夜の入力、端数のない不自然な金額など、注意して見るべき特徴があります。こうした条件で大量の仕訳をふるいにかける作業は、AIが得意とするところです。

AIに仕訳全体を読み込ませ、あらかじめ決めた観点で「気になる候補」を並べさせれば、人は最初から全件を目で追う必要がなくなります。広い畑から、形のいびつな作物だけを機械が選り分けてくれて、人はそれを手に取って確かめる——そんな分担です。母数が絞られる分、限られた時間を、本当に精査すべき項目に振り向けられます。期末監査の繁忙期に、ここで生まれる時間の余裕は小さくありません。

ただし、これは「AIが不正を判定する」話ではありません。AIが挙げるのは、あくまで一次スクリーニングの候補です。その仕訳が本当に問題なのか、合理的な背景があるのかを、職業的懐疑心をもって精査し、不正リスクや誤謬の可能性を評価するのは、公認会計士の判断です。前述のとおり、不正リスクへの対応では職業的懐疑心の保持と発揮が基準上も強調されており、これは機械的な抽出条件に置き換えられるものではありません。AIの抽出条件をすり抜ける手口もあり得るため、AIの結果だけに頼らず、人の経験に基づく目を併用することが欠かせません。AIはふるいを速くしますが、ふるいに残ったものを「問題あり」と認定するのは、最後まで人の仕事です。情報の取り扱いとあわせた社内ルールの整え方は生成AI社内ガイドラインの作り方も参考になります。

内部統制文書のレビューと往査メモの整理

5つ目と6つ目の場面は、内部統制文書のレビュー支援と、往査メモ・質問事項の整理です。どちらも、大量の文章を読み解いたり、整理したりする作業が中心で、生成AIの言語能力が活きる領域です。

内部統制文書から論点を洗い出す

内部統制の評価では、業務記述書やフローチャート、リスク・コントロール・マトリクスといった文書を読み込み、統制が適切に設計されているかを確かめます。ここで生成AIに文書を読ませ、「どこにリスクがありそうか」「統制の記述に抜けや矛盾はないか」を下整理させると、人が論点を見つける手がかりになります。分厚い資料の要点に付箋を貼ってくれる助手のような働きで、レビューの取りかかりが速くなります。もっとも、その統制が実際に有効に機能しているかを評価し、結論づけるのは、あくまで監査人の判断です。AIは読むのを助けますが、有効性を保証するわけではありません。

往査メモと質問事項を構造化する

往査(現地調査)では、経営者や担当者への質問、確認した事実、気づいた点などを、その場でメモに残します。後からこれを整理し、論点ごとにまとめ直す作業は、地味ですが時間を食います。生成AIに、断片的なメモを渡して「論点別に整理して」「次に確認すべき質問事項を抽出して」と頼めば、ばらばらの記録が筋の通った形にまとまります。散らかった机の上の書類を、テーマごとのフォルダに仕分けてくれるようなものです。とはいえ、何を質問し、相手の回答をどう受け止め、どう次の手続につなげるかという往査の本質は、人と人のやり取りであり、独立性と懐疑心をもって臨む公認会計士の役割です。AIは整理を助けますが、現場での判断そのものを代わってはくれません。

図4: 文書レビューと往査メモの整理支援 大量の文書・メモ 統制文書 フローチャート 往査メモ・質問 AIが下整理 論点の洗い出し 抜け・矛盾の指摘 論点別に構造化 会計士が評価 統制の有効性判断 質問設計と対応 結論づけ 読み解きと整理はAI、有効性の評価は人

守秘義務と誤りを防ぐリスク対策

監査業務のAI化で、もっとも気をつけたいのが守秘義務誤りの2点です。被監査会社の機密を扱う仕事であり、かつ監査の信頼が結論の正しさに支えられている以上、ここは設計でしっかり守る必要があります。便利さを急ぐあまり、この土台を崩しては本末転倒です。

守秘義務を守る安全な利用環境を整える

公認会計士には、法令と倫理規則に基づく守秘義務があります。被監査会社の財務データや未公表情報を、安易に一般向けの生成AIサービスに入力すれば、情報が外部に渡ったり学習に使われたりする恐れがあります。これを防ぐ最低限の備えとして、入力データを学習に使わない設定の法人向けツールを選ぶこと、社外に情報が出ない環境で動かすこと、そして何を入力してよいか・誰が使えるかを社内ルールで明確にすることが前提になります。これは、貴重品を扱う前に金庫の鍵と持ち出しのルールを決めるのと同じで、器の安全を確かめてから中身を入れる順番が鉄則です。利便性のために守秘義務を緩めることは、どんな場合でも許されません。

誤りを防ぐ多層の備え

もう一つの誤り対策は、一枚の盾より、何枚もの盾を重ねるほうが頑丈になります。生成AIには、事実と異なる内容をもっともらしく示すハルシネーションという弱点があり、また判断根拠がブラックボックス化しやすいという課題もあります。次のような備えを組み合わせると、リスクを実用的な水準まで下げられます。

この「参照範囲の限定・根拠への追跡・人の査閲・継続的な見直し」という多層の備えは、特定の失敗だけを後追いでふさぐやり方より、ずっと頑丈です。穴を一つずつふさぐやり方では、別の穴がまた開きます。そうではなく、そもそも誤りが生まれにくい土台を作り、出てきても人が止められる関所を設ける——この二段構えが、誤りを構造的に防ぎます。守秘義務の備えとあわせて設計すれば、安心して監査の現場にAIを取り入れられます。リスク対策は、AI活用にブレーキをかけるためではなく、安心してアクセルを踏むためにある、と捉えると前向きに取り組めます。

図5: 守秘と誤りを防ぐ多層の備え 1. 学習に使わない環境を選ぶ 2. 参照範囲を資料に限定 3. 根拠を必ず辿れるように 4. 採用前に会計士が査閲 5. 記録して定期的に見直し 守秘の器と誤り対策の盾を、最初から重ねる

導入手順・効果の目安・伴走支援

最後に、実際にどう進めるかを、導入手順・効果の目安・伴走支援の観点から整理します。難しく構える必要はありません。大きく一気にではなく、小さく始めて測りながら広げる、という基本に沿って進めれば十分です。

導入の5ステップ

おすすめの進め方は、次の5ステップです。一段ずつ上る階段のように、前の段が次の段の足場になります。

この流れの肝は、ステップ1を飛ばさないことです。守秘義務を守れる環境を先に整えるからこそ、安心してデータを扱えます。導入全体の進め方をもっと体系的に知りたい場合は、中小企業AI導入10ステップロードマップもあわせてご覧ください。監査業務に限らない、AI導入全体の段取りを段階的に整理しています。

図6: 小さく始めて広げる導入5ステップ 1. 環境を整える 守秘の器づくり 2. 手続を選ぶ 効果の見える一つ 3. 小さく試す 査閲を挟んで運用 4. 線引き設計 判断は人・確認 5. 測って広げる 他手続へ展開 一段ずつ上るほど、次の段の足場が固まる

効果の目安と測り方

効果を実感するには、始める前と後を比べる「物差し」を決めておくことが欠かせません。たとえば、(1)一つの手続にかかる時間、(2)繁忙期の残業時間、(3)査閲に回せた時間の増減、といった指標です。完璧な測定は不要で、導入前の状態をメモしておき、導入後と比べるだけでも、効果は十分に見えてきます。なお、業界の試算では、仕訳テストのような定型作業の相当部分がAIで代替可能との見方も示されていますが、これはあくまで下作業に関する目安であり、判断業務まで置き換わるという意味ではありません。数字が見えれば、続けるべきか、どこを直すべきかの判断もしやすくなります。費用対効果の考え方はAI投資の費用対効果を測る方法で具体的に解説しています。

横浜・川崎の専門職が活用できる伴走支援

「進め方は分かったが、自事務所だけで設計するのは不安」という所長も多いはずです。その場合、公的な制度や相談窓口、外部の伴走パートナーを組み合わせると、監査業務のAI化を無理なく実装できます。一人で抱え込まず、使える支援に頼ることも、立派な経営判断です。

特に注目したいのがデジタル化・AI導入補助金2026です。中小企業・小規模事業者の生産性向上のため、AIを含むITツールの導入を支援する制度で、通常枠では1者あたり最大450万円、補助率は原則2分の1(小規模事業者は賃上げ等の一定要件を満たすと5分の4まで)が用意されています(デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト)。会計事務所の業務効率化ツールも対象になり得るため、コスト面のハードルを下げられます。交付には目的や計画の明確化が求められるので、申請の準備が、そのまま「何のためにAI化するか」を整理する機会にもなります。最新の枠組みや受付期間は、必ず公式の公募要領でご確認ください。

横浜・川崎エリアは、商工会議所・産業振興財団・よろず支援拠点といった支援機関が厚く、相談先に困りにくい環境です。外部の伴走パートナーと組めば、安全な利用環境の構築・ツール選定・手続の試行・線引き設計・効果測定までを、一緒に組み立てられます。外部が型と知識を提供し、事務所がそれを引き取りながら自走へ移っていく形が、人手の限られた専門職事務所の現実的な進め方です。監査の下準備は、繁忙期に集中する負担だからこそ、少しの効率化が大きな余裕に変わり、その余裕がそのまま判断の質に回ります。まずは一つの手続から、無理のない歩幅で始めてみてください。同じ士業クラスタの設計事例として、弁護士事務所のAI契約レビュー導入設計もあわせてご覧いただくと、「下調べはAI、最終判断は専門家」という共通の考え方が立体的に見えてきます。

📍 横浜・川崎の公認会計士事務所・監査法人の皆様へ

「期末監査の下準備に追われて判断業務の時間が削られる」「調書作成や基準の確認を効率化したいが、守秘義務や誤りが心配」「監査意見は人が担う前提で、安全にAIを取り入れたい」——そんな課題の無料相談を承っています。安全な利用環境づくりから、証憑突合・分析の下準備、調書ドラフト支援、基準の横断検索、異常仕訳の一次スクリーニング、内部統制文書のレビュー、誤りを防ぐ査閲フロー、補助金の活用まで、貴所に合わせて一緒に組み立てます。お気軽にご相談ください。

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参考・引用元

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